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昨夜一睡もできないまま夜が明けてしまいました;

ということでたまには朝っぱらからこうしーん(夜のスカイプに備えて昼寝します;)。
今回語り手はるかです。前回の続きといった感じでしょうか。普段髪はおろしている彼女ですが、夏場は暑いので二つにまとめているようです。




るかの嬉しそうな表情の訳は本編をどうぞ~。




******************
悠々人生 第2話 『遠藤 るか』



「ね、行こう」

としつこく何度も言ったら
 
「考えとく」

とだけ言ってりかちゃんは小説の続きに戻った。気が乗らないのに無理に連れて行くのも悪いか。まあいいや、最悪一人で行くから。
りかちゃんは英文科所属の2回生。去年ここの文芸部に入って知り合った。セミロングの黒髪はストレートで、私と対照だけど読書好きという共通点があった。真面目な見た目に似合わずお笑い好きで、ここ数年やっているサラリーマンNEOとよしもと新喜劇をかかさず見ているらしい。

「でもさ」
 
りかちゃんはまた一つアルフォートをつまみながら言った。これで5枚目。彼女は食い意地が張っている。

「夜遅くに2人で出歩くのって危なくない? 人も多いしさ」
 
ぺろりと指先についたチョコレートをなめながら言う。そういえばそうだ。肝心なことを忘れていた。

「それじゃ深雪ちゃんも誘う?」
「深雪ちゃんは彼氏と行くと思うよ」
 
えっ、深雪ちゃん彼氏いるの? とおもわず声を上げると、りかちゃんはゆっくりと頷いた。神谷くんといって、高山くんと同じ経済学部らしい。

「それじゃ高山くん誘う?」
「えー、女の子2人に男の子1人じゃ、高山くんも来づらいんじゃないの?」
 
りかちゃんはなんとかして宵山に行くのを阻止しようとしているみたいだった。無理なら宵々山でもいいのだが、せっかくだから夜の宵山を体験してみたい。「まあ一応深雪ちゃんに言ってみるよ」とりかちゃんは励ますように言った。

「それよりさ、これ食べない?」

そう言ってりかちゃんが渡してくれたのは、袋分けされたお菓子。開けてみると、小判のような形の平たいものが出てきた。

「これ高級和菓子じゃない。どうしたの?」
「お詫びにもらった」

「食べて食べて」と笑顔で勧めるりかちゃんとは反対に、私は怪訝な顔をして「お詫びってなんの?」と首をかしげた。

「この間買った草餅に異物が入ってたの。店に苦情言っても代金しか返してくれなくて、お客様苦情係に電話した」
「それのお詫びがこれ・・・・・・」
 
なんでも箱入りで持ってこられたらしい。お菓子は甘じょっぱくて上品な味だった。

「まあ調べてみたら、茎だったらしいんだけどね」
 
とりかちゃんもせんべいをかじりながら言った。そこまでするりかちゃんに驚かされた。食べ物の恨みは一生消えないというやつだろうか。

「よかったね、茎で」
「うん、よかった。こんな高いお菓子めったに食べられないもん」

いやいやそうじゃなくて。でも言っても聞かないだろうから、黙っておいた。りかちゃんは少々どころかかなり食い意地が張っている。もしかしたら夜店のものをおごると言ったら、多少危険でも2人で宵山に行けるかもしれなかった。

「るかちゃん、夏休みは実家に帰るの?」
「うん、お盆くらいは帰ろうかな。なんかうちのお母さんがりかちゃんに会いたがってたよ」
「え、ほんと? 一度るかちゃんのお母さんに会ってみたいなあ。でも東京まで行くとなると交通費が・・・・・・」
「あ、行くならりかちゃんの分も出すよ」
「え?! そんな・・・・・・悪いよ」
 
急にりかちゃんは慌て始めた。

「いいってそのくらい。まあ出すって言っても親に出してもらうけど、いつもりかちゃんにお世話になってるからって言えば大丈夫だと思う。だから一緒に東京行って、遊んで帰ってこようよ。ね?」
「それって夜行バスで行くの?」
「何言ってんの。新幹線に決まってるでしょ」
「それならなおさらだめだって!  そんな、私の分まで出してもらえない。帰ってからお母さんに話してみるから」
 
何をそんなに慌てふためいているのか。何もそんなに遠慮することないのに。新幹線代なんて2万くらい。飛行機代に比べればずっと安いじゃないの。それとも突然誘ったのがまずかったのだろうか。

「あはは冗談だって、ちょっと言ってみただけだよ。りかちゃんそんな本気にとらなくても。ただ一緒に東京行けたら楽しいだろうなーって思ってただけなのに」
 
もしこんなことで宵山行きが中止になったらたまらないので、私は軽い調子で言った。

「あ、4時! 私そろそろ帰るね。遅くなると地下鉄混むから。それじゃまた来週―」
 
更に明るく言って、私は部室のドアを閉めた。行きたいなあ、宵山。一緒に行ってくれる彼氏はいないし、深雪ちゃん一緒に行ってくれないだろうか。もしくは同じ学科の子に声かけてみようかなあ・・・・・・。
そう思いながら外に出るとめちゃくちゃ暑くて、かばんの中に入れていた日傘を探した。傘を広げようとすると、こちらに向かって歩いてくる男子学生が見えた。さらさらとした黒髪のすっきりとした短髪の男の子。高山くんだ。

「おーい、高山くーん!」 
片手を上げながら彼の側に近づいていった。
 
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